山裾の家

AN邸

 四国山地の山深い所に位置する、四国八十八か所霊場のひとつ焼山寺、その
山裾に佇む住宅の耐震診断から始まった。

 建物は平屋建て寄棟屋根の母屋に併設する、二階建て離れという配置で、建設
時期が異なることから、新しい母屋の布基礎に対して、改修する離れは石場建て
という構成である。離れの方は建具や二階床の傾斜なども見受けられ、耐震設計
として成立させるために、構造的にも有利になる、二階建てから平屋への減築を
ひとつの答えとした。二階部分だけを解体し、小屋組みを新しくかけ直すという
方法である。

 ここで解決しなければならないのが、同じ建物で布基礎と石場建てが同居でき
るかということ。また一方で、柔らかい建物は柔らかい土壁で補強するという考
え方がある。しかしここでは、少ない耐力壁で効率よく耐震性を確保するため、
「部分布基礎」をバランス良く配置した。但し一部とはいえ、地廻りの梁組をそ
のままに、石場立てを布基礎に置き換える仕事は、この地域の古い民家をよく知
る工務店に依頼する必要があった。

 屋根デザインはオーソドックスな意匠の組み合わせを意識した。L型平面であ
る母屋の寄棟屋根に対し、離れの小屋組みを急勾配の切妻屋根に切り替えて変化
をもたせた。そうすることで、山肌の稜線に呼応した山間地の風景の一部とする
ことができた。

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