徳島駅前活性化と新ホールの提案
2020年08月05日
徳島市長 内藤佐和子殿
こんにちは
名西郡神山町で一級建築士事務所を営んでいる橋本健一と申します。徳島市の新ホールと駅前エリアの現状に鑑み、アミコビルの文化交流施設としての可能性を検討してみました。県との協調や助成の枠組みがあるのは承知しているつもりですが、もし検討の余地があるならば目を通していただけると幸いです。
徳島市新ホール整備の新たな提案
まちづくりの手法にはその街の現状や特性、またその時々の時代にあわせた相性があります。他の街の成功事例をそのまま当てはめてもうまくいくとは限りません。徳島駅前エリアの場合、そごうを含めたアミコビル外周の2階レベルにはペデストリアンデッキが設置されており、なおかつ放射状に歩道橋が接続されています。駅前空間でありながら安全に歩車道分離された、人々が行き交うアプローチが既に出来上がっています。
その中心である駅前コンプレックスビルを全面的に見直し、文化・商業・宿泊などの機能をコンパクトに集約します。時代錯誤の大規模再開発や有名建築家の斬新なモダン建築ではなく、徳島の方たちにとても馴染み深い商業空間であるアミコビルを、できるだけ残しながら一新し、生まれ変わることで、駅前の活性化・文化の向上・商業空間の再配置を同時に実現できると考えています。
1500人前後の規模の新ホールは、ホテルやオフィスと合わせエキスパンションから西側に全面建て替えとします。道路レベルの搬入口や出演者控室の充実など、その他様々な検討が必要になりますが、可能性はありそうです。アプローチはペデストリアンデッキとそごう内部からのルートが考えられます。シビックセンター機能の一部や図書館は、商業空間とともにエキスパンションから東側のそごう部を残し、リノベーションとします。
ホテルは今後のインバウンド需要を見込んで、阿波踊りシーズンだけでなく、眉山を眺めるお風呂を充実させた高級ホテルへの一新も良いのではとイメージしています。その他に年間を通した「阿波踊り」との融合が可能な「ポッポ街商店街」の改修など、他県にはない駅前施設の展開も考えられます。コロナウィルスの動向を見なければなりませんが、やはり阿波踊りは、ホールなどのフォーマルな施設で行うのではなく、より一体感の感じられる場での舞が魅力です。 次ページにアミコビル周辺の航空写真に書き込んだ配置スタディを添付いたします。かなりラフでたいへん心苦しいのですが、おおよその縮尺は合っていますので、提案内容を伝えられるものと考えています。限られた資料でのスタディなため、より詳細な既存図面を元に構造・設備の詳しい検討を加え、基本構想の提案ができたらと考えています。どうぞよろしくお願いいたします
県立ホール新駅の是非 2021年03月24日
徳島県は吉野川に沿って東西に長く平野が広がり、南北にも主要な街が広範囲に点在しています。また第一級河川を隔てた南北の往来を考えれば、車社会は今後も続くことは明らかです。駅前だけの交通網を整備しても街の発展は望めません。私が94~95年にかけて現場常駐の日々を過ごした富山県の中心地は、古い町並みと新しい庁舎や商店街の中をレトロな路面電車が行き交う新旧併せ持った街です。その後に中心市街地の活性化を目指し、富山市は2000年初頭から次世代路面電車の導入と併行してコンパクトな街づくりを整備していますが、まだ道半ばのようです。本気で徳島にコンパクトシティを模索するのであれば、人々の住まいごと移動するわけですからとても長いスパンで考える必要があります。
徳島県立新ホールの整備にあわせて出てきた県立ホール新駅の計画は、街づくりという同じ視点のように思われますが、場当たり的な計画性の無さは否めません。また徳島駅前のそごう撤退に伴うアミコビルの再利用計画はいまだに先が見えないままです。トータルで考える専門的視点が明らかに不足しています。きちんと聴診器を身体にあて、何処が具合悪いのか分析しこの街にあった処方箋を見つけます。血流がどこかで滞っているのならば時には外科手術も必要です。まちづくりの手法にはその街の現状や特性、またその時々の時代にあわせた相性があります。他の街の成功事例をそのまま当てはめてもうまくいくとは限りません。
若き市長の掲げるグランドビジョンがどこにも無いのは一目瞭然でしたので、昨年の8月7日に、1500席の新ホールとそごう無き後のアミコビルリニューアルの一体的な計画案を現市長宛に提案しました。アミコビルはホテル部分と旧そごう部分とが構造的に分かれているので、そのおおむね半分を新ホールとして解体新築し、駅前施設の活性化を図ろうとした一石二丁の計画案です。ところが提案後まもなく、2000席ホールや突然の新駅発表に、肝心の駅前開発は置いてきぼりとなりとても驚きました。錆だらけのアーケイド屋根はこのままなのでしょうか。この際、ここまで引っ張ったのだから駅前開発はとことん議論するべきです。しかし終始言葉遊びで終わってしまう街づくりワークショップでは何も前に進まないでしょう。明確な方向性のある青写真を描ける専門家を交えて、いくつか計画図面を提示しながら議論を進めると良いと思います。
提案後は特に市長の動向に注目していたのですが、新聞報道をみていると迷走ぶりが目立ちます。若い市長なのに利権を温存したい年老いた守旧派のような振る舞いです。現在の政権をみれば明らかように、このままではそのつけはすべて市民が負うことになります。ここは思い切って、今回20億円の貸付を受ける予定の徳島都市開発株式会社は解体して、駅前開発のイニシアチブをニュートラルな状態にすることから始めたらどうでしょう。県立新駅ホールの是非はそれからです。コロナウィルスの終息も見えない中で、公然と利権を温存させては、ほんとうの徳島の未来を考えることにはならないのではないでしょうか。
ARCHI-CONNGE一級建築士事務所 橋本健一